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衝動-5(完)

す…………っかり忘れてました!←
これ、完結させてなかった……なんて(汗)

ああ……最後までものは書いてあったというのに、載せてなかったなんてなぁ。
まだ読む方がいて下さるか不安ですけども、投下しておきます。



「キール……もし、お前がオレの事を嫌いでないんなら、このまま任せてくれないか?」

 それはあのとき、僕が言った言葉。
 成程。そのままに仕返しするという行動に出たわけか。
 仕方ない。これは受け入れるしかなかった。リッドにはその権利があるし、僕には抗う資格がない。
 ただ、一つ心配なのは僕の体がそれに耐えられるかということ。
 どちらも男のときは、どうやら早く言うなら女役の方が負担が大きいのは、明らかだった。
 元々がリッドほど体力のないこの体で、果たして耐え切れるかどうか。
 いや、耐えねばなるまい。
 だが、覚悟を決めてそのときを待っていてもリッドはなかなか何をしてくるわけでもない。
 どうかしたのかとリッドを見れば、リッドは相変わらず俯いたままでいた。

「何で……逃げねぇんだよ」

 俯いたままのリッドが言う。
 その声には力がない。

「嫌だろ? なのに何で逃げねぇんだよ。オレの事なんか押し退けてさっさと逃げりゃいいじゃねぇか」
「そんな事、するわけがないだろう。さっきも言ったが、僕はリッドの事が好きなんだから」
「誰が、誰を……だよ」
「僕が、リッドをだよ」

 上体を起こして、優しく諭すように言えば、途端にリッドが顔を上げた。
 見開かれているその目には、溢れんばかりに涙が溜まっていた。
 そして次の瞬間には、怒りとも悲しみともとれる表情に歪んだ。

「……なんだよ、それ」
「リッド?」
「何なんだよ? 何でキールがそんなこと言うんだよ! お前なんか、オレを見ようともしなかったくせに!
 先にオレを無視したのはお前じゃねぇか! しまいにゃオレを置いてどっかに行っちまいやがった!
 なのに……何でそのお前が、そんなこと言うんだよ!」
「おい、リッド?」
「オレは……いらない。どうせ失くすくらいなら、置いていかれるくらいなら、もう何もいるもんか!」

 泣き喚く。そう表現するのが適当だろうリッドを僕はただただ呆然と眺めていた。
 普段、ここまで感情を吐露する事のない相手だ。珍しいどころではない。
 おそらく、先の行為の負担に因るものだろうとは思う。身体的以上に精神的な負担に因るのだろう。
 思わぬ負荷にいつもは抑えている部分が溢れ出したというところか。
 だが、まさかリッドがそんな想いを抱え込んでいるなんて思ってもなかった僕は、返す言葉を失くしていた。
 だけれど、置いていかれるとか、どうせ失くすくらいならとかには、何となく心当たりがあるのも確か。
 何となく、繋がるものがあった。
 ラシュアンの、惨劇。
 多くの村人を亡くしたあの忌まわしい、出来事。
 当時のことを、僕はよく覚えていない。幼かったからではなく記憶そのものが抜け落ちているのだ。
 そうして、そのまま僕自身は何も分からぬ内に、家族ごとミンツへと引っ越した。
 リッドにしてみれば、置いていかれたも同然に感じられたことかもしれない。
 後から知った事だが、あの後ファラも暫らく寝込んでいてリッドに会うことは随分なかったという。
 そしてリッドの父親はあのとき亡くなっている。
 僕は、家族と。同じく親を亡くしていたが、ファラは、伯母さんと。それぞれ一人ではない。
 けど、リッドは一人。
 自分の他は誰もいない家で、ずっと独りで、心細さも、寂しさも耐えてきたに違いない。
 面倒臭がり屋を装って何にも深入りしようとせず適当にあしらうのは多分全て自分の心を守るため。
 大切なものを、作らないように。
 心を開かないように。
 そんなリッドに僕は何を言った?
 彼が押さえ込んでいた傷を、気付かずに知らずに暴き出して、その弱みに付け込むような真似して、利用し。
 より深く、その傷を抉るようなことを、僕は――

「――リッド……っ!」

 大粒の涙を零しながらなお耐えるように泣くリッドを、堪らず抱き締める。
 途端、びくりとその体が強張る。
 けど、構わずにより強く抱き締めた。離したく、なかった。

「すまない。本当にすまなかった。だけど、僕は。あんなことをしておいて、今更、言えたものでもないけど。
 けど、僕は本当に、リッドのことが好きなんだ。
 もう、離れたりしない。リッドを置いてどこかに行く事もしない。
 だから――だから、傍にいさせてくれ!
 僕に応えてくれなくていい。だけど、せめてお前の傍にいさせてくれ!
 僕は、リッド。お前を守りたいんだ。お前に守られるだけの側でいたくないんだよ!
 そりゃ僕は戦闘面では頼りないかもしれないけど……。
 だからせめて、心の支えになりたいというか……だから!」

 次第に溢れ出てくる感情のまま喚く。何を喚いているのかは自分でも分からない。
 ただ、リッドが好きなだと。何よりもリッドのことが大切なのだと伝えたかった。
 強張っていたリッドの体は、だけど微かに震え始めていた。
 怖がらせたのかもしれない。当然か。男が男にこんなことを言われて、嬉しいはずもない。
 けど、手を離す事が出来ずそのままでいたら、次第に何かが聞こえてきた。
 それは必死に抑えようとするような、笑い声。

「キール……お前、やっぱ馬鹿だろ」

 呆れたようにリッドは言う。それも、笑いながら。

「あのなあ、オレが前で剣を振るえるのは誰のおかげだと思ってんだ? お前らがいるからなんだぞ?
 後ろにお前らがいるから安心して前の敵にだけ集中出来るんだ。
 守られるだけとか言うなよ。こっちは背中預けてんだぜ?」
「リッド……」
「それと……その、悪ぃ。ちっと取り乱しちまって」
「いや、それは……気にしなくていい。僕の方こそ……悪かった。その、手荒な真似をして……」
「あー、あれなあ、ほんっと、滅茶苦茶に痛かったんだぞ? つか……今も座ってんのがやっとだけどな」

 言われて、その顔色の悪さに気付く。
 体調は良くないらしい。無理をさせ過ぎたのだと再び思い知らされる。
 なのだが、僕は余程貪欲なのか。口は勝手に、開いていた。

「良ければ、もう一眠り、一緒にしないか?」

 正直、リッドが素直にそれを聞いてくれるとは思ってなかった。
 体が痛くて言い返したりするのが面倒だったのかもしれないが、されるがままに僕の腕の中に収まった。
 確実に朝に痺れているだろうなと頭のどこかで思いつつ腕枕をすれば、抵抗感もなさそうに頭を預けている。
 普通、あんな事をされた相手にこうまで無防備に体を預けられるものだろうか?
 また襲われるとか、考えないのだろうか?
 そのあまりな無防備さに僕は再びあの衝動に駆られかけていた。
 だが。

「なんか……昔、父さんといた頃を思い出すな」

 独り言のように呟かれた言葉に、胸を衝かれた。
 小さく寝息をたて始めたリッドはきっと無意識にだろうが、僕の夜着を握り締めていた。
 それはまるで、幼い子供のような不器用な仕草。
 寝苦しさを与えないよう気を遣いながら、軽く抱き締める。
 どこにも行かないから。
 安心して眠ってほしいと祈りながら。





 そういえば、なんかずっと「お前らがいるから」とか複数形で言われていた気がするけども。
 気のせい……だよな?
 というかだ。
 もしかしなくても、鈍過ぎだろう?
 まあ、分かっていたけどな。
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